新聞コラムを書く際、しばしば古今東西の名言を引用する。感銘を受けた言葉として拝借する場合もあれば、取り上げたいテーマの導入として使うケースもある

▼年明けの本紙特集面「心に刺さる名言至言」は、アスリートの言葉などを紹介していた。識者の齋藤孝さんは、名言は川の中に打たれた「くい」みたいなものと解説していた。「つかまれば流されずに自分を取り戻せる。心を守るとりでになる」からだという

▼言葉そのものが力を持つ場合もあれば、それを誰がいつ口にしたかに意味がある一言もある。「情熱は年齢を重ねても変わることはない」と言ったのは、2月で59歳になるサッカーの三浦知良さんだ。プロ41年目の今季はJ3福島で現役を続ける

▼W杯に心を奪われ、15歳でプロになると決意した。高校の監督に単身ブラジルへ渡ると伝えると「お前には99%無理」と諭され、言い返した。「1%あるならその1%を信じます」

▼サッカーの本場で差別的な扱いもはね返し、プロとなって実績を積み、8年目に帰国した。発足したJリーグで無二のスターとなるが、1994年W杯は最終予選の「ドーハの悲劇」で一歩届かず、31歳で迎えた98年W杯は、本大会の直前でまさかのメンバー落ちをした

▼当時の心境を約20年後の著書に記す。〈この後どう生きていくか心の強さが問われていると感じた〉。そして〈とことん続けることこそが無念さを払う生き方だ〉と思い定め今に至る。貫いてきた人の言葉がずしりとくる。

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