伊藤比呂美さん
 伊藤比呂美さん
 「わたしのおとうさんのりゅう」

 児童文学に関する評論なのか、はたまた両親についてつづったエッセーなのか、なんとも形容しがたい不思議な本だ。詩人の伊藤比呂美さんはそんな新著を「私の詩」と表現する。「ある意味、ぐちゃぐちゃの本なんですけど、詩人という自称をずっと捨てないでいる私が何を書けるのかというと、この形になったんです」

 詩には三つの要素があると話す。誰かの人生についての「語り」。地に足をつけ、肉体を持った個人が、大いなるものとつながるように声を出す「歌」。言葉そのものの力で現実世界を動かす「まじない」。本書はそうした要素を全て含んだ「私の理想とする詩」なのだという。

 詩はまた、自分が見た風景の描写を、言葉一つ一つにこだわ...

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