「若者が増えてにぎやかな街になれば」と語るフーさん(左)とチャンさん=新潟市中央区の「カフェフィン」
「若者が増えてにぎやかな街になれば」と語るフーさん(左)とチャンさん=新潟市中央区の「カフェフィン」

 現代社会は複雑だ。胸にストンと落ちないまま、もやもやしている課題が並ぶ。人口減、憲法、新型ウイルス対策…。一方から見れば正解のようでも、立ち位置が違えば正しいとは思えないこともある。参院選の争点に対する見方も、自分とは異なる価値観や文化にヒントがあるかもしれない。新潟県内在住の外国出身者に聞いてみた。

 「外国人をいっぱい呼んで街づくりができれば活気が出ます」。新潟市中央区でベトナムコーヒーのカフェを経営するレ・ホン・フーさん(31)は明快に語る。

 県によると、2020年の本県在留外国人は約1万8千人。そのうちベトナムは中国に次いで2番目に多い約3600人。5年で4倍に増えた。ウイルス禍前、母国の経済成長率は毎年5%を超えていた。それでもなお、日本の方が豊かに見えるという。

 だが、著しい円安で母国へ送金するメリットがなくなってきた。労働環境を巡る課題も山積する。フーさんは「住みやすい」と胸を張って言うためにも「もうちょっとサポートがほしい」と訴える。

 ベトナムは改革開放を進める1990年代初頭、法人税減免など外国人の起業に手厚い支援があった。フーさんは経営を学ぶために来日し、20年に新潟を拠点にカフェとコーヒーの卸業を始めた。ただ、日本で起業するには500万円以上の資本金と、お金の出所証明が必要だった。従業員の雇用も求められる。「せめて家賃補助とかあればいいのに」とこぼしてしまう。

 言語の壁も厚い。県内に住むベトナム人の7割が技能実習生。フーさんと同様、留学を機に新潟で暮らし始め、現在はカフェ店長のダン・チャン・バオ・チャンさん(26)には彼らの悲痛な声が届く。「契約書に『必ず』と書いてないから、『昇給がなくてもいいだろ』と社長に言われても、実習生は分からない」

 多くの実習生は日本の企業とつなぐ「送り出し機関」へ仲介料を払うため、母国で借金をしてきた。日本ではウイルス禍で仕事が減った。低賃金も重なり基本給だけでは暮らせない。それなのに、アルバイトは禁じられている。「ルールを破るのは駄目だけど、失踪や泥棒をするしかないと追い詰められる人が出る状況。なぜそうなるか考えてほしい」とフーさんは語る。

 失踪や犯罪のために今、日本ではベトナム人の悪いイメージが広がっていると感じている。一方で、つらい思いをした実習生から交流サイト(SNS)などを通じて日本の実情が母国に伝えられる。「やがてベトナム人は台湾や韓国に行き、日本を選ばなくなるのではないか」と危惧する。

 入管難民法では厳しい在留資格が規定されている。管理する「労働者」としか見ておらず、「共生」の考えが乏しいことを2人は懸念する。そして、同じ税金を払っているのに「差別のないように、権利を守ってくれないのか」とも。

 実習生や留学生、日本にやってくる多くのベトナム人は20代の若者だ。ベトナム人同士、あるいは日本人との間に子どもができて、安心して暮らせるのなら-。「若い人が増えて新潟はにぎやかになります」とチャンさんは語った。