憲法改正への首相の前のめりな姿勢が際立った。国民政党を自負するのなら、目標時期を決めて議論を進めるのではなく、幅広い国民の意見を取り入れ、丁寧な議論を重ねていかねばならない。

 自民党が都内で党大会を開いた。党総裁である高市早苗首相は憲法改正に関し「時は来た。発議に何とかめどが立ったと言える状態で、来年の党大会を迎えたい」と表明し、意欲を示した。

 党大会で採択した2026年運動方針は、衆参両院の憲法審査会に憲法改正条文の起草委員会を設置し、改憲原案の国会提出を目指すとした。

 首相は2月の施政方針演説では「国会発議が早期に実現されることを期待する」と述べていた。「来年の党大会」と時期を明示したことで、改憲に向けてアクセルを踏んだと言える。

 改憲への議論を加速させる狙いなのだろうが、スケジュールありきで進めるものではない。

 世論調査などで、国民の改憲への機運が醸成されているとは言えず、「時は来た」と首相が言ったことも疑問だ。

 参院は自民と日本維新の会の与党、さらに改憲のスタンスが近い国民民主党を合わせても、議員数が発議に必要な3分の2には届いていない。首相の思惑通りに進むかは見通せない。

 改正項目の絞り込みも、まだ十分ではないだろう。

 自民内には「本丸」とする9条への自衛隊明記を求める意見が根強いものの、衆院の改憲勢力は賛同を得やすいとして「緊急事態時の国会議員任期延長」の議論を先行させてきたからだ。

 運動方針には来春の統一地方選の勝利も掲げた。

 それには大勝した先の衆院選で掲げた政権公約を一つ一つ実現することが大切だと、首相は述べた。

 ただ、公約には改憲のほか、インテリジェンス(情報活動)機能や防衛力の強化といった「国論を二分する」政策が含まれる。「責任ある積極財政」は、財政を悪化させるとの懸念が市場に強い。

 党大会で発表した立党70年の新ビジョンには「多様な意見を尊重し、国の進路を定める」ことを盛り込んだ。言葉通りの国会運営を求めたい。

 衆院で26年度予算案を数の力で強行採決したことは記憶に新しい。公約実現のために、数の力で押し通す手法を繰り返すなら、国民の支持は離れていくだろう。

 首相が記者団の前で立ち止まって質問に答える「ぶら下がり取材」に応じる回数が、歴代首相より少なく、自身のX(旧ツイッター)に投稿し、主張や政策の発信を続けていることも気がかりだ。

 一方的に言いたいことを言うだけの発信よりも、記者の質問に答え、国民に堂々と説明することが国のリーダーとして不可欠だ。