小説家あさのあつこさんは、自らの体験から、家族や親友の心のひだを細かく、温かく描く。随筆で“縁結びおばさん”が絶滅しそうだと寂しがっていた

▼年ごろの息子や娘がいる親がおばさんに身上書を持っていく。「ふさわしい相手を探してくださいな」。おばさんは頭の中にある町内の独り身データをひもとき、お見合いを段取る。頼りは「長年の縁結びで培った勘のみ」

▼おばさんは「あくまでお節介で人が好き…、この世にはお金に換算できない楽しみがあることを知っている人」である。隣近所が助け合い、一緒に泣き笑いするような時代だったから、そんな縁づくりができたのだろう

▼現代のネット社会では婚活や出会い系のサイトが目立つ。でも、多くが学歴や年収、容姿の「スペック」(仕様書)比べのようで素顔や心が伝わりにくい。内閣府によると、結婚歴のない30代は男女とも4人に1人が「結婚願望なし」だ

▼30歳時の未婚割合は男性が50%、女性が40%を超えた。女性は40年間で4倍増だ。20代の独身で、男性の4割、女性の4人に1人がデート経験がないという。ウイルス禍で外出や収入が減り、現実社会で出会いの機会が一層減っているらしい

▼家族像や恋愛観は多様化の一途だ。一人での暮らしを選択する人生もある。それなのに同性婚をはじめ、市民の生き方に対する司法や行政の対応はあまりに堅苦しく感じる。“縁結びおばさん”に代わって、多様な生き方を支えてくれる存在は見当たらないものか。

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