少し前にはやった言葉に「名ばかり管理職」がある。相応の権限や報酬が与えられず、管理職なので残業代も出ない従業員のことを指した

▼「名ばかり個人事業主」という言葉もある。実体は働く場所や時間を企業に決められる労働者なのに、業務請負契約などを結んでいるため個人事業主として扱われる。そのため、社会保険加入や残業代支払いの対象にはならない

▼ここのところ、有名無実で実体が伴わない「名ばかり」という言葉をよく思い浮かべるようになった。きっかけはロシアのウクライナ侵攻だ。世界の安全と平和を保つために存在するはずの国連安全保障理事会は侵攻に歯止めをかけられないでいる

▼安保理の機能不全は以前から指摘されていたが、決議などの拒否権を持つ常任理事国のロシアが当事者になったことで一層鮮明になった。実効性のある対応が取れず「安全保障」の看板は名ばかりになっている

▼そんな中でも変化はある。常任理事国が拒否権を行使した場合、総会で理由の説明を求められることになった。多くの国が出席する総会で説明させることで、拒否権の行使に少しでもプレッシャーをかける狙いのようだ

▼日本は来年から2年間、安保理の非常任理事国を任される。史上最多12回目の選出という。政府は安保理改革に意欲を見せる。大国の思惑が絡み合う中、並大抵のことではないだろう。それでも国際社会で唯一、法の支配の下で平和を守るために存在する機関である。名ばかりでいいわけがない。

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