極めて特異な事故だ。なぜ隊員の命が失われたのか。原因究明を徹底し、早急に再発防止策を打ち立てねばならない。
大分県の演習場で、陸上自衛隊の部隊が戦車の射撃訓練をしていた際、戦車内で砲弾が破裂して、乗っていた隊員3人が死亡し、1人が重傷を負った。
事故は、国産の「10式(
ヒトマル
)戦車」の上部で旋回が可能な「砲塔」で発生した。
過去に起きた砲塔内での砲弾破裂は、1979年に北海道の演習場で隊員1人が死亡した1件だけだ。異例な事故と言える。
79年の事故は、発射直後に後退した砲身と、次に発射する砲弾の信管が接触したため起きた。
今回の事故については、熊本市の西部方面総監部に設置された事故調査委員会が、詳しい状況や原因を調べている。
訓練で使った砲弾は対戦車りゅう弾で、自動的に装塡(そうてん)される。事故の直前までは通常通り射撃ができていたという。
車両内にドライブレコーダーのようなものは搭載されていないが、隊員同士は無線で連絡を取り合っており、交信記録などから原因を探るようだ。
車両や砲弾に不具合がなかったのかも含めて、詳細な調査に努めてもらいたい。
陸自は10式戦車を2011年度から導入し、25年度末で約120両保有、各地の部隊に配置している。情報や通信の性能に優れ、戦車同士の連携や歩兵に当たる普通科部隊ともネットワークで接続し戦闘に当たるという。
安全が確認できるまで、同種の対戦車りゅう弾を使用する戦車の射撃訓練を中止するよう各部隊に指示した。当然の措置だ。
民間への被害はなかったものの、演習場の周辺住民に与えた不安は大きい。
訓練を監視する住民グループは「訓練は安全に管理されていると国から説明を受けていたのに」とし、懸念を強めている。
陸自はなぜこのような事故が起きたのか、原因を明らかにし、自治体や近隣住民にしっかりと説明するべきだ。
日本を巡る安全保障環境が厳しさを増し、26年度の防衛費は過去最大の9兆円超となった。4月からは防衛増税も始まった。
防衛省は、戦車などの防衛装備品には多額の税金が投入されていることを肝に銘じ、安全管理に努めねばならない。
