戦闘再開は回避されたが、先行きは不透明なままだ。停戦を維持しつつ、双方が和平への再協議に真摯(しんし)に臨まねばならない。

 米国のトランプ大統領は、イランとの停戦を延長した。具体的な期限は示していない。

 延長について、トランプ氏は交流サイト(SNS)で、仲介国のパキスタンから再攻撃を控えるように要請を受けたと説明した。

 加えて、イランの体制内部で交渉を巡る意見対立があるとの見方を示し、イラン側から統一された提案が出されて協議が終了するまでは、停戦を延長するとした。

 7日の停戦合意の際、2週間としていた停戦期限が迫る中で、交戦が避けられた格好だ。

 ただ、状況が好転しているとは言い難い。

 米メディアによると、米国とイランは当面、イランによるウラン濃縮活動の停止、ホルムズ海峡の開放、制裁緩和を主な論点に、戦闘終結に向けた大枠を定める覚書への署名を目指しているが、溝があるためだ。

 特にホルムズ海峡に関する隔たりは鮮明になっている。

 2月末の米国とイスラエルの攻撃以降、イランは海峡を事実上封鎖し、米国は対抗措置として今月13日から米軍にイランの港湾を封鎖させている。

 イラン側は、米国の封鎖を停戦違反だと批判し、封鎖が続く限り海峡を開放しないとの立場を取る。米国側は、封鎖はイランとの合意を成立させるために必要な措置だと正当化し、それぞれ船舶の拿捕(だほ)にも踏み込んだ。

 エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の緊張は、すでに日本など各国に原油の供給不安や、石油由来製品の高騰、不足といった影響を与えている。

 世界経済へのより深刻な打撃を避けるためにも、緊張緩和を急がねばならない。

 国際法違反が濃厚とされる先制攻撃にはじまり、全面降伏に近い要求を押しつける米国の手法が、再協議の緒に就くこともできない事態を招いているのは明らかだ。

 米国は仲介国などの協力を得て、再協議の基盤を立て直す必要があるだろう。

 米国の強硬姿勢の背景には、国内事情もあるとされる。

 トランプ氏は、2015年に民主党オバマ政権下で結ばれたイラン核合意よりも「はるかに良い合意」を目指すと主張している。

 11月に中間選挙を控えており、敵視するオバマ元大統領を超える実績をつくって、軍事攻撃を正当化したい考えだ。

 政権安定という狙いが透けて見えれば、イランのみならず国際社会からの信頼も得られまい。

 イランは、体制内強硬派の伸長が伝えられる。体制維持のためではなく、国民の命と生活を重視した和平交渉が求められる。