紛争解決の手段として武力を否定した憲法の平和主義を逸脱する懸念が拭えない。国会が関与する仕組みを改めて検討するべきだ。
政府は、防衛装備品の輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則と運用指針を改定した。
完成品輸出を、救難、輸送、警戒、監視、掃海の非戦闘目的に限る「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器の輸出を解禁した。
東南アジアなどの同志国への輸出を促進し、防衛協力を強化する。有事に必要となる継戦能力を確保するため、国内防衛産業の生産基盤強化を狙う。
高市早苗首相はX(旧ツイッター)で「平和国家の基本理念を堅持する」とした上で「装備移転を戦略的に推進する」と投稿した。
小泉進次郎防衛相は「トップセールスを一層強化したい」と述べ、5月にフィリピンの国防相と護衛艦輸出について協議する。初輸出に前のめりの姿勢が顕著だ。
日本の安全保障環境が厳しさを増しているとはいえ、紛争を助長したり、軍拡競争をあおったりする事態に陥らないか心配だ。
武器輸出は首相、官房長官、外相、防衛相による国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合で審査し、輸出を認めた際は国会に通知することになっている。
野党の一部は、一定金額を超える輸出案件は国会への事前通知の義務化を提言していたが、採用されなかった。事後的な通知が、際限のない輸出拡大を防ぐ歯止めとなるのか、心もとない。
米国を念頭に「特段の事情」がある場合は紛争中の国への輸出を例外的に認める余地を残した。
だが、米国によるベネズエラやイランへの攻撃は国際法違反との指摘もある。いかに同盟国とはいえ、慎重な対応が求められる。
輸出された武器が適正に管理されているかの確認も課題である。日本の技術が第三国に流出する恐れがあるからだ。
政府は、輸出先に職員を派遣し保管状況を定期的にチェックするとしているが、武器を逐一追跡するのは限界がある。
武器が他国への侵略に使用された場合の対応について、小泉氏は国会の質疑で「相手国に使用停止を求め、是正を強く要求する」と答弁したが、運用指針に記載されていないという。今回の改定自体に、不備があるのではないか。
そもそも、安保政策の重大な転換にもかかわらず、十分な国会論議も、国民への説明もなされていないことは看過できない。
共同通信社が3月に行った世論調査では殺傷能力のある武器輸出を「認めるべきではない」が56・6%で、「認めるべきだ」の36・9%を上回った。
武器輸出を巡り、国民の評価が分かれているのは明らかだ。首相はリスクも含め、改めて丁寧に説明するべきである。
