2度の激震に襲われながら、被災地は復興の取り組みを続けてきた。誰一人取り残さないように、今後も細かな目配りが必要だ。
災害の後、避難生活中に体調を崩して亡くなる「災害関連死」は、今も災害の度に大きな課題として浮上する。救える命を守る社会の仕組みが求められる。
2016年4月14日に最初の激震「前震」、16日に「本震」が起きた熊本地震から10年となった。
観測史上初めて震度7を2回観測したこの地震で、関連死を含め278人が亡くなった。住宅は全壊が約8600棟、半壊が約3万4700棟に上る。
10年の復興の努力を経て、地震の爪痕は見えにくくなっている。仮住まいが続いているのは2世帯まで減った。
ただ、大きな被害を受けた自治体では人口減少が進むなど状況は一様ではない。被災者、遺族への継続的なケアも重要だ。
熊本地震が突きつけた課題の一つに、災害関連死の多さがある。
亡くなった人のうち、災害関連死は223人と8割を占めた。
避難所生活のストレスでくも膜下出血を発症した、重い持病のある人が転院を余儀なくされた、などの事例が報告された。
災害に備えた社会の仕組みが整っていれば失われずに済んだのではないか。残念でならない。
気がかりなのは、24年1月の能登半島地震でも犠牲者の約7割を占めるなど、いまだ関連死を抑えられていない実態である。
先進国の中でも劣悪とされる避難所の環境改善が急がれる。過去の災害では、トイレの数の不足から水分の摂取を控え、体調を崩す人が出た。体育館での雑魚寝はプライバシーを保てず、被災者を精神的に疲れさせた。
政府は24年12月に、自治体向けの避難所運営指針を改訂し、トイレの数や1人当たりの専有面積に国際基準を反映させたが、小規模自治体では人材や財源不足が対応の障壁となっている。
国による自治体への支援に加え、物流事業者に災害支援物資を運んでもらう体制を築いておくなど、官民の連携も欠かせない。
集団生活の不安から在宅避難を続ける人などに対しても、国は都道府県の「災害派遣福祉チーム(DWAT)」による支援強化を打ち出したが、その中核となる介護職は慢性的な人手不足が続く。
人材の確保など、平時から福祉の充実を図ることも求められる。
今後、発生が見込まれる南海トラフ巨大地震について、政府は災害関連死が2万6千~5万2千人に上ると想定している。恐ろしい人数である。
11月の発足を目指す防災庁は、災害関連死対策にも注力する方針を示す。熊本地震をはじめ過去の災害を教訓に、一人でも多くの命を守る政策を講じる責務がある。
