求められるのは安全最優先の姿勢だ。立地県の懸念と絶えず向き合ってもらいたい。
試運転をしていた東京電力柏崎刈羽原発6号機が営業運転に移行した。2011年の東電福島第1原発事故翌年に停止して以来14年1カ月ぶりに、首都圏方面への電力供給に復帰した。
福島事故を起こした東電は、廃炉や賠償で巨額の支払い義務があり、火力発電の燃料節減につながる柏崎刈羽の再稼働を経営の最重要課題に位置付けてきた。
中東情勢が不安定な中、政府もエネルギー安全保障に寄与する原発の重要性を強調する。
しかし、原発の負の側面から目を背けてはならない。
福島事故がもたらした未曽有の被害を見れば原発のリスクは明らかである。にもかかわらず、事故を起こした当事者である東電の安全管理には不安がある。
6号機は当初、2月26日から営業運転を始める予定だった。大幅にずれ込んだのは、制御棒に関連する不具合が相次いだからだ。制御棒は、核分裂反応を抑える安全上重要な設備である。
不具合の調査で、30年間にわたって見落としてきたミスがあることも分かった。東電に原発を扱う資格があるのか、疑問視する専門家がいるのは当然だろう。
運転開始から今年で30年になる6号機は、30年超運転に必要な認可を原子力規制委員会から得る必要があるが、東電の手続きが遅れたほか、申請書類に多くの誤りが見つかった。再提出に際しての修正は90カ所に上る。
柏崎刈羽のテロ対策に関わる社員が秘密文書を不適切にコピーしていた問題も発覚している。
ずさんな企業体質が浮かび上がってくる。
原発に設置が義務づけられたテロ対策施設は完成時期が見通せない。原発からの避難道路も整っていない。その中での営業運転だ。電力消費地は、立地県の県民感情に思いを巡らせてもらいたい。
青森県知事の判断は重く受け止めなければならない。
使用済み核燃料を一時保管する青森県むつ市の中間貯蔵施設を巡り、26年度の搬入を認めない考えを3月に明らかにした。
最長50年保管した後の搬出先となる再処理工場の完成めどが立たないことを踏まえ判断した。
柏崎刈羽からは26年度に60トンを運ぶ計画だが、搬入できなくなる可能性がある。
使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルは行き詰まっている。さらに原発から出る「核のごみ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定も、足踏みが続いて長い。
無責任な原子力政策である。営業運転により、行き場のない使用済み燃料を増やし続けることの是非を考えねばならない。
