米国とイランの停戦交渉が成立したとしても、石油供給が安定するまでには時間がかかる。調達ルートの多様化が不可欠だ。
既に供給不足による影響が生じている。政府は後手に回ることなく、国民への協力要請といった対策も検討しなければならない。
政府は、4月末までに放出を終える石油の備蓄約50日分に続き、約20日分を5月上旬以降に追加放出すると表明した。
第2弾として市場に出し、放出量は計約70日分となる。放出開始前に消費量換算で241日分あった備蓄の約3割に当たる。
備蓄に加え、米国産や、サウジアラビア西側の紅海などホルムズ海峡を通らないルートでの原油も確保し、5月には前年実績の過半の調達が可能になるという。
とはいえ、調達量が十分とは言い切れず、今後も放出が続く可能性がある。油断できない状況だ。
中東情勢の混乱で、幅広い石油関連製品が影響を受けていることが浮き彫りになった。
原油を精製して作られるナフサは、プラスチックなどの原料として多くの製品に使われる。しかし備蓄制度はなく、石油関連製品の値上げや販売制限が相次ぐ。
影響が目立つのが建築資材だ。塗料の希釈に使うシンナーの不足で、住宅建築やリフォーム工事が止まる事態も出始めている。
政府は流通の目詰まりを解消して打開を図るとし、メーカーに生産を抑えないよう求めているが、思惑通りに進むか見通せない。
中東産の石油製品を原料にアジアで生産される医療用手袋も不足が深刻で、政府は備蓄分を放出する。アジア各国に金融支援し、石油関連製品の安定供給を狙う。
政府がしきりに、石油や原料の必要量は確保していると強調するのは、混乱の拡大を防ぎたいからだろう。政府内には、石油製品の使用を抑えるよう国民に求めれば、過度な自粛を招き、経済に影響するとの懸念もあるという。
ただ、備蓄放出を迫られる状況にありながら、政府が国民に平常通りの経済活動を続けるよう呼びかけるだけではちぐはぐで、疑心暗鬼を招きかねない。
原油高対策として再開したガソリン価格を抑える補助金も、ガソリンの使用を促すことになり、供給不足と矛盾する。油価高騰が続けば財源が枯渇する恐れもある。
日本と同様に中東産原油に大きく依存する韓国は、国民や企業に車の利用抑制を呼びかけている。タイでは政府が公務員に車の利用を控え、在宅勤務を取り入れるよう促している。
国際エネルギー機関(IEA)は在宅勤務や公共交通機関の利用など電力、燃料の消費を減らす策を打つよう提言している。
危機を乗り越えるには、政府が適切な言葉で国民に呼びかけ、理解を得る努力が求められる。
