今なお廃炉が見通せていないことを重く受け止めねばならない。原発がはらむ危険性の高さを物語っている。対岸の火事とせず、教訓を学び取りたい。

 史上最悪の原子力災害を引き起こした旧ソ連ウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故から40年となった。

 事故のあった4号機の原子炉建屋は今でも放射線量が高く、人が中に入ることはできない。

 事故発生当時あった約190トンの核燃料の95%が、デブリと呼ばれる溶融核燃料などとして残っていると報道される。

 核燃料除去には「さらに100年かかる」との見方がある。

 この現実を直視すべきである。原子力を扱う難しさを如実に伝えるのがチョルノービリ原発だ。

 事故は旧ソ連時代の1986年4月に起きた。試験運転中に4号機が爆発し、欧州各国も放射性物質で汚染された。

 深刻度を示す国際尺度は、2011年に起きた東京電力福島第1原発事故と並ぶ最悪の「レベル7」とされた。

 数十人が急性放射線障害で亡くなった。周辺で甲状腺がんの増加が指摘され、死者は推定4千~9千人とされる。この甚大な被害を忘れてはならない。

 これほどの被害をもたらす原発は、攻撃対象になる恐れがある。

 ロシア軍は22年2月のウクライナ侵攻初日にチョルノービリ原発を占拠した。ウクライナが奪還した後も攻撃が続き、何度も外部電源を喪失した。

 昨年2月には4号機を覆う鋼鉄製シェルターにドローンが直撃した。さらにロシア軍はウクライナ南部のザポリージャ原発を砲撃し、占拠を続ける。交戦中に偶発的な原子力事故が起きる可能性は否定できないだろう。

 原発が外部から制圧された驚きは大きい。電力源を掌握されれば社会の混乱は避けられない。問われるのは東電柏崎刈羽原発を含めた各原発の防護の在り方だ。

 日本は、原発にテロ対策施設の設置を義務付けている。

 原発が再稼働に向けた工事計画の認可を受けてから5年以内に施設が完成しなければ、原発は運転できなくなるルールだった。だが原子力規制委員会は今月、期限を延長することを決めた。

 完成が期限に間に合わない事例が相次いだためだという。再稼働した柏崎刈羽6号機も、テロ対策施設が未完成のまま31年4月まで運転が可能となる。

 立地県の不安と向き合ったのか疑わしい期限緩和だ。

 ロシアによる侵攻や、中東の不安定化によるエネルギー供給の懸念から、原発への依存が高まろうとしている。

 しかし、最優先すべきは安全である。40年たっても続く脅威から目を背けてはならない。