なぜ政府が数値目標を定めるのか。実現可能性も見通せない。現実に目を向けたエネルギー政策が求められる。
経済産業省は廃炉を決めた原発の建て替え基数の目標案を提示した。2040年代までに2~5基、50年代までに11~14基の建て替えが必要だとした。
今後の廃炉により減少する原発数や将来の電力需要を踏まえ、安全性を高めた次世代型原発への建て替えを想定して試算した。
40年代に不足する発電能力約220万~550万キロワットには2~5基、50年代までの不足分約1270万~1600万キロワットには11~14基の建て替えが必要だと算出した。
今夏にも関係閣僚会議で決定する見通しだ。
政府は東京電力福島第1原発事故後、原発への依存度を低減させる原子力政策を打ち出したが、22年に最大限活用へと転換し、その後、リプレースと呼ばれる建て替えも容認した。
背景には、生成人工知能(AI)普及やデータセンター拡大に伴い電力需要が増加するとの見込みがある。数値目標を公開し、原子力発電の将来像を示すことで人材確保や投資を促す狙いがある。
電力不足対策なら、再生可能エネルギーの活用でも可能だが、原発に肩入れをしてエネルギー政策を進めようとしていることに疑問を抱かざるを得ない。
原発の建て替えは需要に応じて電気事業者が判断することであり、政府が具体的な数値目標を設定することに違和感を覚える。
建て替えに当たっては巨額の建設費が大きな課題だ。23~24年に運転を始めた米国の原発は、規制強化などにより当初の140億ドル(約2兆2200億円)から320億ドルに跳ね上がった。
建設コストが高騰すればいずれ税金や電気代の形で国民の負担が増える可能性もある。巨額の費用を投じる建て替えが電力消費者の理解を得られるのかも疑問だ。
政府は廃炉を決めた原発の敷地内だけでなく、同じ電力会社であれば、他原発の敷地でも建設できるよう環境整備を進めてきた。
九州電力は玄海原発(佐賀)の廃炉を決めた代わりに川内原発(鹿児島)での建設を模索しているとみられる。これでは集中立地につながる危うさがある。
原発活用に力を入れる前に福島の事故原発の廃炉を安全に終えるべきだろう。
福島の事故が甚大な被害を及ぼし、今も故郷に帰れない人がいることを忘れてはならない。
東電は柏崎刈羽原発1、2号機の廃炉を検討している。各地で廃炉作業が道半ばという状況でその先にある建て替えに対する地元同意は見通せない。
中東からの原油調達難に乗じて政府が原発活用に走っているのだとすれば愚かしい。
