中東の安定に向かうことができるか、重要な局面にある。危機回避へ冷静な歩み寄りが不可欠だ。
米国・イスラエルとイランの戦闘終結に向け覚書締結が急がれる中、トランプ米大統領は11日、締結へ最終調整しており、早ければ週末に署名できる可能性があると記者団に主張した。
イラン外務省報道官も、覚書の主要部分はまとまったと述べた。
戦闘終結の道筋が付いたのであれば歓迎したい。だが、ここまでの米国とイランの攻撃の応酬を見れば、予断を許さない。
米軍は10日以降、イランの通信システムや防空施設を攻撃した。
これに対してイラン革命防衛隊は、クウェートなどの米軍拠点を攻撃した。さらにイラン軍事当局は、ホルムズ海峡を封鎖し、通航する全ての船舶を攻撃対象にすると宣言した。
トランプ氏は交流サイト(SNS)でイランを激しく攻撃すると予告したが、11日には一転、予告していた攻撃の中止を表明した。
トランプ氏は戦闘終結に向けた協議内容を「イラン指導部の最高レベルが承認した」と主張する。
一方、イラン側からは「最終決定されていない」との認識と同時に、米国が交渉を通じて「立場を変え続けてきた」との批判が上がっている。
米国は、これまでの無軌道な姿勢が根強い不信感を生んできたことを自覚せねばならない。
トランプ氏は4月にパキスタンの仲介で停戦に合意した後も、「停戦の延長を望まない」などと発言し、周囲を翻弄(ほんろう)してきた。
その発言は過激であり、「一つの文明が今夜滅ぶだろう」と投稿したこともある。
米国防長官が「爆弾を使った交渉」と表現するように、圧倒的な武力を背景にした脅しである。国際秩序に反する。
イスラエルの強硬姿勢も気がかりだ。ネタニヤフ首相は、レバノンでの親イラン民兵組織ヒズボラへの軍事行動にこだわってきた。米イランの停戦に水を差す行為だ。自制が求められる。
イラン情勢を巡る生活費の負担増に、米国民の不満が高まっている。支持を失わないよう、停戦を維持したいのがトランプ氏の本音だろうとの見方がある。
米報道によると、最近の攻撃では、イラン側の死者を出さないように配慮していた。
イランも米側の意図は理解し、犠牲者が出る事態は回避しているとみられる。
しかし、実際の戦闘終結まで気を抜くことはできない。
国連のグテレス事務総長は「小さな火が全面戦争に発展するリスクを過小評価するべきではない」と警鐘を鳴らしている。
米、イランともに武力に訴えることなく、隔たりを埋める努力を続けるべきである。
