クマの脅威から人命をいかに守るか。対策のために生息実態の把握と分析を進めたい。
県内のクマの推定生息数が2025年度の調査で8747頭と過去最多になったことが、県のまとめで分かった。
推定は4534~1万7470頭と幅があり、中央値をとった。現行の推定方法になった22年度以降、中央値は千頭台で推移しており急増した形だ=グラフ参照=。
県によれば、算出に用いる捕獲数や出没数の増加が影響し、数値が上振れした可能性がある。県猟友会も「8千頭までは多くない」との現場実感を示す。
幅はあるのだろうが、一定規模の生息を表す数字だ。今後、推定の精度を高めていく必要がある。生息の実態をつかむことで適切な管理につなげたい。
県がこれまでの秋冬に加えて実施した春の捕獲も注目したい。
期待されるのは、冬眠明けに人里に出没する個体を減らす効果だけではない。
専門家は、狩猟技術継承や、人とクマとの緊張関係の構築といった意味もあると指摘する。
26年度からは環境省が全国統一的な手法で個体数の推計を実施する。県をまたいで移動するクマの行動を把握するには、自治体の枠を超えた情報共有が欠かせない。
25年度は、県内での目撃・痕跡報告件数が過去最多の3528件に上った。
全国でも出没件数が5万件を超え、これまでの最多だった23年度の2倍超になった。人的被害は238人で、このうち13人が亡くなっている。
クマが行動範囲を広げ、人の生活圏に入り込んできているのは明らかである。
昨秋の大量出没で、人里に餌があることを学習した個体が多いとみられる点も懸念材料だ。
今月、50万都市の宇都宮市の市街地でクマが目撃されたのは驚きだ。住宅の軒下で見つかったのは成獣とみられるツキノワグマだった。住宅街は障害物が多く捕獲が難航した。
本県でも今年4月に67件、5月に157件の目撃・痕跡が報告されている。25年度を上回るペースになっている。
遭遇する恐れが、秋だけではなくなったことを改めて肝に銘じたい。繁殖期に当たる6~7月は活動が活発になるとされ、市街地でも気を緩めることはできない。
