党内事情や看板政策のアピールばかりが優先されてはいないか。民主主義の土台に関わる問題だ。やみくもに削減議論を進めるべきではない。

 衆院議員定数1割削減を巡り、自民党は政治制度改革本部総会に「基本的な考え方」案を示した。

 案は、衆院議長の下の与野党協議会で削減方法を検討し、定数を削減する法の施行から1年以内に結論が出ない場合、比例代表の定数を現状の176から131へと45削減するとしている。11日に条文か要綱を示す。

 削減については、党総裁である高市早苗首相が「今国会で1割を目標に衆院議員定数削減を目指す。削減は比例代表として、党内の意見をまとめてほしい」と指示を出していた。

 定数削減は、自民と連立を組む日本維新の会が、身を切る改革の「センターピン」と位置付け、連立政権合意書にも盛り込まれた。昨年12月には両党が定数削減に関する法案を衆院に提出したが、衆院解散で廃案になっていた。

 見過ごせないのは、廃案となった法案と、今回首相が指示した内容の違いだ。

 削減対象は、法案では小選挙区で25、比例で20だったが、今回の指示では比例のみとした。

 説明不足という印象が拭えない。閣僚経験者からも「比例だけの削減はいつ決まったのか。首相一人で決める話ではない」と批判の声が上がっている。

 変更の背景には、2月の衆院選で自民が大勝したことがある。

 現状は10都県で小選挙区を独占しており、削減対象が小選挙区に及べば、現職が競合しかねない。衆院選で比例との重複立候補者の多くが小選挙区で当選したため、比例の14議席を他党に譲ったという不満も党内にくすぶる。

 こうした事情から、首相は小選挙区からの削減は党内調整が困難だと判断したとの見方が強い。内向きな判断で、選挙目当てのそしりは免れない。

 比例代表のみ45削減した場合、野党への打撃は大きい。

 2月の衆院選結果と5月公表の2025年国勢調査速報値を基にした共同通信の試算では、中道改革連合の比例獲得議席は42から31に減り、減少率は26%と自民の15%を大きく上回る。

 他の野党の減少率も、国民民主党、参政党が40%に上るなど、自民と比べ不利な状況が浮かぶ。

 既に中道、立憲民主党、公明党は反対で一致し、国民民主も批判を強めている。

 結論が出なければ自動的に比例だけを45議席削減するという発想は、あまりに乱暴だ。

 定数の削減によって国民の声が届きにくくなるとの懸念も根強い。与党は今国会での成果に固執することなく、各党と定数の公平な在り方を議論すべきである。