長年の課題に前進が見られたことは評価したい。ただ、肝心な点を先送りした玉虫色の案といえる。反対する党派もあり、「立法府の総意」となるのか疑問だ。
衆参両院は8日、皇族数確保策に関する全体会議を開き、衆参正副議長が取りまとめた「立法府の総意」案を衆参13党派に示した。
総意案は、政府の有識者会議が2021年に示した「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案」と「皇籍を離脱した旧11宮家の男系男子を養子に迎える案」の主要2案を了とした。総意に基づく法制化を政府に要請する。
自民党や中道改革連合など7党がおおむね賛同した。森英介衆院議長は10日に再び全体会議を開催し、取りまとめる方針だが、一部の野党は反対を表明している。
減り続ける皇族の確保は喫緊の課題である。4年半にも及んだ議論をまとめ、少しでも多くの政党の合意を得ようとしたといえる半面、文言解釈に幅がある曖昧な表現が目立つ。
女性皇族の婚姻後の皇族身分保持では、おおむね各党派が賛同するものの、論点だった「その配偶者と子への身分付与」については言及しなかった。
身分を付与しなければ、一代限りの女性宮家となり、皇族数の増加には結びつかない。与党が母方に血筋がある女系天皇誕生につながる懸念から反対していたことが背景にある。
関連の記述は、必要と認められる時は「所要の措置が講じられる」など曖昧な表現にとどまり、課題は置き去りのままだ。
養子案は、1947年に皇籍離脱した旧11宮家の男系男子が対象となる。養子の年齢や養親の範囲、養子自身は皇位継承資格を持たないといった条件を挙げ、慎重な制度設計を求めた。
男系の伝統維持を重視する自民が制度恒久化を主張するのに対し、皇室典範が養子を禁じていることや、門地による差別を禁じた憲法14条との兼ね合いがある。
「必要があると認められる場合は一定年数ごとに見直す」としたが、こうした表現では、各党の認識にずれが生じかねない。
80年ほど前に皇籍を離れた当事者の子孫は既に、一般国民として生活しており、皇族にふさわしいとして国民の理解を得られるかが焦点となる。
軽率なのは、森議長が記者会見で「養子になった男子に男の子が生まれれば、皇位継承権を持つ」と発言したことである。
有識者会議の報告書は、皇位継承権の問題とは切り離している。中道や公明党などが「立法府の総意案を超える内容だ」と反発したのも当然だ。
政府与党が、今国会中の皇室典範改正を目指す中で、火種は残ったままだ。今後も不断の議論が欠かせない。
