物価高の苦境に対処しなければならない。だが、減税がふさわしいのか。財政状況に目配りした慎重な議論が欠かせない。

 飲食料品の消費税減税を巡り、税率ゼロではなく1%とする案が政府内で有力となっている。2027年4月1日実施を軸に検討しているとみられる。

 小売店のレジシステムは課税を前提としており、税率をゼロにした場合は改修に1年程度を要するが、3日に開かれた超党派の「社会保障国民会議」の実務者会議では、税率1%であれば半年程度に短縮できることを確認した。

 高市早苗首相は、2月の衆院選で自民党公約として27年3月末までに飲食料品の消費税率をゼロに下げることを公約していた。

 4月に税率を1%に下げれば、ほぼ実現したことになるとの目算が政府内にあるのではないか。1%分に当たる年約6千億円を補助するなどの形で「実質ゼロ」にする案も浮上しているという。

 公約実現への姿勢は理解する。しかし、消費税は基幹税である。安易な減税に走るべきではない。

 減税に伴う負担の側面にも目を向けなければならない。税率変更はレジ改修や店頭の値札貼り替えといった手間、コストがかかり、小売店の負担が大きい。

 首相は「なるべく早く」と訴えるが、減税決定から半年程度で実行されれば、過去の税率変更に比べ準備期間は圧倒的に短い。

 小売りの弁当などの税率が下がる一方、外食業界の税率が10%で維持されれば、割高感から客足が遠のく心配も根強い。

 公約の実現を急ぐあまり、現場へのしわ寄せに目をつむるようでは無責任である。

 気がかりは、財政に及ぼす影響の大きさだ。税率ゼロにすれば、国と地方の税収に年間計5兆円近い穴が開く。1%でも約4兆3千億円が失われる。

 地方財政に打撃であるのは間違いない。消費税は社会保障の財源であり、減税となれば、高齢社会を支える医療や介護、さらに子育て支援といった行政サービスの低下につながる可能性があることに留意したい。

 減税を決めるのであれば、こうしたサービスの代替財源も同時に示すべきである。

 首相は、減税を2年間に限ると説明している。その後は現行の軽減税率8%に戻すことを想定しているが、実質的な増税となり、反発が予想されるだろう。

 物価高対策としての減税の効果が、必ずしも消費者に還元されない事例も海外からは聞こえる。

 上昇した製造コストや、従業員の賃上げ分が価格に上乗せされて、期待通りに物価が下がらなかったという。

 公約実現の体面に固執せず、減税がもたらす財政悪化リスクと向き合うべきだ。