超高齢社会を支える仕組みで、誰もが利用者となる可能性がある。本人の意思が十分尊重される制度の実現に向けて、運用面も含めた改善を続けたい。
認知症や知的障害などで、判断能力が十分でない人をサポートする「成年後見制度」を見直す民法改正案が衆院を通過した。一度利用を開始すると、亡くなるまで後見人が付く「終身制」を廃止することを変更の柱に据えている。
成年後見は、判断能力が十分でない人の権利や財産を法的に守るため、2000年に導入された。
本人や家族が利用を申し立て、家裁が弁護士や司法書士、親族らを後見人に選定する。後見人は、本人に代わって財産を管理したり、契約を取り消したりする権利が与えられる。
ただ、終身制である現行制度では、例えば不動産売却の代理だけを依頼しようとしても、日常的な財産管理まで任せなければならないなど、本人の希望が制約される事態が起きていた。
制度が基本理念に掲げる「自己決定の尊重」が達成されているとは言い難い状況だ。
制度の不便さは、普及の足かせにもなってきた。
政府の推計では、認知症の高齢者は25年に471万人に上るが、最高裁によると成年後見の利用者は25年末時点で約26万人にとどまる。諸外国と比べ、制度の利用者は極端に少ないとされる。
今回の改正は、制度を柔軟化させて、利用の促進を図る。認知症の人の増加が想定される日本の現状を踏まえれば、必然の動きと言えるだろう。
改正案では、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分けていた支援の形を、症状が軽い人向けの「補助」に一元化する。家裁は補助人に代理権を与える行為を決める。
補助を続ける必要性がなくなったと認められれば、家裁が職権で終了させることができ、家族からも終了の申し立てができる。
遺産相続に限った代理など、スポット利用に道を開く変更だ。当事者を支える団体からは「必要な時に、必要な人が、必要なだけ使える制度に近づく」と歓迎の声が上がる。各人の実情に合った支援につながることを期待したい。
改正後の補助人の業務は、現行の後見人に比べ限定されるため、地域の支援がより重要になる。
地方では医療、福祉分野の人手不足が深刻だ。行政や法律など各分野の専門家と連携し、支援の漏れを生まないネットワークの強化を急がねばならない。
成年後見には、支援が必要な状態になる前に、後見人や財産管理などの委任内容を決めておく「任意後見」もある。
納得できる暮らしを送るために、一人一人が制度への理解を深め、自分に適した手法を選びたい。
