過労死が後を絶たず、実質賃金は伸び悩む。働く多くの人が将来への不安を抱えている。
心身ともに健やかに働き、賃金で安定した生活が可能になる。そんな社会の実現を目指したい。
メーデーの1日、県内でも労働団体が集会やデモ行進を行った。メーデーは1886年、米国の労働者が8時間労働制を求めてストライキをしたことにさかのぼる。
140年を経た日本で、働く環境はどう変わったのか。
厚生労働省によると、2024年度、過重な業務や強いストレスが原因の「過労死等」で労災認定された件数は、1304件と過去最多になった。
このうち脳・心臓疾患で亡くなったのは67件、精神障害による自殺・自殺未遂は88件と、いずれも前年度より多い。
国は18年に働き方改革関連法を成立させ、時間外労働の罰則付き上限規制を導入するなどしたが、長時間労働の是正は今なお途上と言わざるを得ない。
厚労省が昨年10月に実施したアンケートでも、回答した労働者のうち、労働時間を「増やしたい」とした割合は1割と、「減らしたい」の3割、「このままで良い」の6割を大きく下回った。
だが、高市早苗首相は「労働時間規制の緩和検討」を掲げ、2月の施政方針演説では「裁量労働制の見直し」に言及した。
裁量労働制は、実際の労働時間に関係なく、労使であらかじめ決めた時間を働いたと見なし、賃金を支払う。
経団連は、自律的に働くことができるとして制度の拡充を求める。厚労省も各企業の裁量労働制の運用状況を調査する方針だ。
一方、労働組合などは、実際に働いた時間が見なし時間を超える「サービス残業」の温床となるとの懸念を強く示している。
長時間労働は、過労死遺族らの訴えを受けて抑止策が取られてきた経緯を忘れてはならない。
政府は労働現場の実態を踏まえ、労働者の命と健康を守る労働政策を進めるべきである。
実質賃金の伸び悩みも、働く人たちの生活に打撃を与えている。
厚労省の統計で25年の1人当たりの実質賃金は前年比1・3%減と、4年連続のマイナスとなった。物価高騰に、賃金の上昇が追いついていない。今年のメーデーでも、物価高を上回る賃上げを求める声が上がった。
ただ、賃上げが経営を圧迫している中小企業もある。大手の下請けとなることの多い小規模事業者では価格転嫁を十分に進められず、賃金の原資を確保することが難しくなっているためだ。
国内の労働者のうち、約7割は中小企業で働いている。国は価格転嫁や取引の適正化を強く後押しし、賃上げが可能な環境作りを進めねばならない。
