日本の精神科病院には何十年もの入院を余儀なくされた末に、死亡をもって「退院」となる患者たちがいる。「そんなばかなことがあってたまるか」。社会から切り離され「不可視化」された人たちを「仕方がない」存在とみなす風潮に、本書は力強く異を唱える。

 著者は長期入院者の退院と退院後の生活を支援する社会福祉法人で十数年勤めてきた職員だ。

 退院した人はそろって「自由」の素晴らしさを口にするという。湯船に一人で入ること、好きなものを食べること、星空を見ること。具体的な言葉の数々は、入院生活がいかに世間離れしているかを物語る。

 入院の原因は幻覚や妄想を主な症状とする統合失調症が多くを占める。サポートがあれば自分の住ま...

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