きょう、79回目の憲法記念日を迎えた。
憲法が掲げる基本理念は平和主義、国民主権、そして基本的人権の尊重だ。この憲法があったからこそ、日本は戦後、平和国家、民主国家として歩み続けることができた。
施行から歳月が過ぎたからといって、色あせるような理念ではないだろう。
高市早苗首相は4月の自民党大会で「立党から70年、時は来た」と述べ、来春に見込まれる党大会までに、党是である改憲の発議を実現できるめどをつけたいとの意欲を示した。
憲法のどの部分を変えるのかには言及しなかった。これでは「改憲ありき」のように映る。
どの部分を、なぜ変える必要があるのか、国民への具体的な説明から始めるべきだ。
改憲議論を巡る環境は昨年の憲法記念日とは異なる。自民と連立政権を組む政党が公明党から日本維新の会に変わった。
自民は、改憲4項目の一つとして憲法9条に自衛隊を明記することを掲げる。公明は9条改正に消極的な立場だったが、維新は積極的だ。
◆平和主義大きく変容
自維連立政権が発足してから半年の間に、国際紛争を武力で解決しないとした憲法9条の理念を逸脱しかねない政策変更が矢継ぎ早に行われた。
殺傷能力のある武器の輸出解禁はその一つだ。紛争中の国への輸出も米国などを念頭に「安全保障上の特段の事情」がある場合は可能とした。
武器輸出は首相、官房長官、外相、防衛相による国家安全保障会議4大臣会合で審査し、認めた場合には国会に通知する。
野党が求めていた国会による関与は事後的なものにとどまった。歯止め策としては実効性が不透明で、際限ない武器の輸出につながりかねない。
防衛省は熊本市と静岡県の陸上自衛隊駐屯地に長射程ミサイルを配備した。これにより敵領域のミサイル基地などを攻撃する反撃能力(敵基地攻撃能力)の行使が可能になった。
反撃能力を持ち、殺傷能力のある武器を輸出するようになることは、日本の平和主義の大きな変容と言わざるを得ない。
世界各地では戦火が続く。米国とイスラエルによるイラン攻撃で中東情勢は混迷が続き、ロシアによるウクライナ侵攻も終結の見通しはたっていない。
軍備拡張を進める中国や、核ミサイル開発を続ける北朝鮮など、日本を取り巻く安全保障環境も厳しさを増している。
そうした中にあるとはいえ、政府が安全保障政策を転換し、防衛費を増やしたことが、真に地域の平和と安定に資するかどうかは考えねばならない。
平和憲法があるからこそ日本は、アジアをはじめ、諸外国から信頼を得てきた。それを失うことにつながる恐れがある。
◆前のめりな姿勢危惧
与党と国民民主党は衆院憲法審査会で「緊急事態時の国会議員任期延長」について、改憲条文案の作成を提案した。ただ、中道改革連合など4党は同意していない状況だ。
国の根幹に関わる議論だ。2026年度当初予算案審議のような強引な方法は許されない。
共同通信が3~4月に行った世論調査で、改憲の必要性が「ある」とした人は「どちらかといえば」と合わせ69%だった。9条改正の必要性については、賛否が拮抗した。
一方で、国会で改憲論議を急ぐ必要はないとした人は53%で、急ぐ必要があるとした人の46%を上回った。73%の人が、改憲に当たっては野党を含めた幅広い合意形成を求めていることにも着目すべきだ。
高市政権の前のめりな姿勢に、国会前で開かれる改憲反対集会の参加者が増えている。
主催者発表では2月に3千人台だったのが、4月には3万人を超えた。共同通信の分析では参加者の半数を20代、30代が占めた。県内の街頭行動にも若い人の姿が目立つ。
平和憲法の危機に際し、若い世代が行動し、声を上げている。憲法の理念が次の世代に引き継がれていくことに期待する。
首相は憲法を「国の理想の姿を物語る」ものと位置づける。だが、憲法は国の在り方を示すと同時に、国家権力の暴走を防ぐものでもある。
憲法は権力者が思うようにできるものではない。
私たち国民も政治家任せにせず、憲法について考えたい。
