指導に名を借りた威圧的な行為は、心身への暴力と言えるもので断じて許されない。指導者はもちろん、理不尽な行為を放任した学校や管理職も、責任を痛感しなくてはならない。
2024年6月に、新潟工業高校3年の男子生徒が自殺した問題で、県教育委員会の第三者委員会が調査報告書をまとめた。報告書は、生徒が所属していた柔道部の監督だった男性教諭による「指導死」だったと結論付けた。
指導死とは、教員の体罰や行き過ぎた指導を苦にした自殺を指す。県内で明確に認められたのは、今回が初めてだ。
報告書によると、監督は、県高校総合体育大会の会場で試合に負けた生徒を𠮟責(しっせき)し、翌日には学校で大声を出して𠮟った。
翌々日の練習の際にも生徒に対し厳しい𠮟責や突き放す発言などを繰り返した。練習後、生徒は着替えながら泣いていたという。その次の日に自ら命を絶った。
試合で思うような結果を出せなかった生徒に寄り添うどころか、追い打ちをかけるように責め立てるのは一方的で、指導者としてあるまじき対応だ。
権威的で執拗(しつよう)な指導に尊厳を踏みにじられ、生徒が抱いたであろう罪責感や深い絶望は、想像するに余りある。
同じ悲劇を二度と繰り返してはならない。横暴な指導が生徒を追い詰めたことを、教諭は猛省し、改めるべきである。
監督は、個々の部員に応じた指導で部員や保護者から信頼されていた半面、機嫌が悪いと練習が厳しくなり、前触れなく怒ることもあったという。
部員が常に監督の顔色をうかがうような状況は、生徒らの成長や自由な発言を阻むもので、健全な部活動の場には程遠い。
監督は、教員や他競技の部員を怒鳴ったり、部活優先で他の仕事を拒否したりする問題行動もあったが管理職は指導しなかった。
管理職が監督に対して適切に注意喚起していれば、最悪の結果にならずに済んだ可能性はあるだろう。学校、県教委は専横的な行動を助長させた責任を受け止め、きちんと検証してもらいたい。
不適切な指導について、文部科学省は教員用の手引書で「大声で怒鳴る」「物をたたく」などを例示し、理解促進を図っている。
何が適切な指導で、何が暴力に当たるのかを、教員と生徒、保護者の全員でしっかり共有したい。
その上で教員は、生徒の指導には複数で臨むなど、より良い接し方を模索する責務がある。
報告書によると、生徒の高校では部活動で悩みが生じた場合の相談窓口を確認できなかった。
再発を防ぐためにも、SOSを出せる環境を早急に整え、安心して相談してよいと、生徒に繰り返し、丁寧に周知してほしい。
