インターネット上の投稿でプライバシー情報を明かされたり、中傷されたりする被害がやまない。平穏な生活を脅かす、度を超えた投稿の拡散をどう防ぐか。交流サイト(SNS)の運営事業者には本腰を入れた対策が求められる。

 総務省が運営を委託する「インターネット違法・有害情報相談センター」に寄せられた被害相談は近年、6千件前後で高止まりしている。被害者の多くは投稿情報の削除を訴えている。

 2024年度の被害相談は、誹謗(ひぼう)랈中傷が3989件、写真や動画などのプライバシー情報が2408件だった。この二つは右肩上がりの傾向で増えており、ともに過去最多を更新した。

 問題とされた投稿が多いのは大手事業者が運営する(SNSだ。X(旧ツイッター)、メタ、グーグルの3社が運営するサイトだけで相談の4割を占める。

 ネット情報は拡散するスピードが速い上、際限なく広がる。事業者は「表現の自由」に配慮しつつも、速やかに対処す)るべきだ。

 大規模事業者は25年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)で適切な対応を義務付けられた。法施行から1年がたつが、削除されずに泣き寝入りするケースは後を絶たない。

 情プラ法は、大規模事業者に被害者が申告できる窓口の設置や、投稿を削除する基準の明示、迅速な削除判断を義務付けている。

 しかし、十分に対応できているのかは疑わしい。投稿の削除要請に応じる態勢をしっかりと整えているようには見えないからだ。

 どのような投稿を削除するかは極めて難しい判断になる。

 情プラ法で指定された9社は削除に関する調査を担う専門員を置かなければならないが、X、メタ、グーグルなど8社は昨年11月時点で、専門員の人数を法令で定められた最少の1人にとどめていたことが分かっている。

 膨大な数に上る削除依頼に、たった1人の専門員で速やかに対処できるのか。被害の拡散を一刻も早く断ち切りたいという願いに正面から向き合う誠実さが欠けていると言わざるを得ない。

 事業者が消極的とも取れる対応をしている背景には、SNS上での表現の自由を守りたいという思いもあるだろう。

 自由な表現が制限される社会は確かに望ましくない。政治家など社会的に影響力を持つ人の動向など、公共性の高い情報が制限されれば、国民の「知る権利」が損なわれる恐れもある。

 一方で、匿名性を悪用し、個人のプライバシーや誹謗中傷をむやみに拡散する人権侵害も許されるべきでない。

 SNS事業者には、被害の拡散を食い止める責任がある。不適切な投稿を速やかに削除する態勢の整備は待ったなしだと言える。