
(絵:100%ORANGE)
30代半ばのころ、友人から「いしいくん、お茶やったほうがいいよ」といわれた。「わたし外国にひっこすから、かよってる表千家の社中に空きがでるの。紹介するよ」
むかし、両祖母ともお茶の免状をもっていた。いたずらがばれると正座させられ、濃厚すぎる濃茶を最後の一滴まで飲まされた。
初訪問の日、和花専門店で季節の花のブーケをつくってもらった。服装は、ちょっと上等なアロハと穴のあいていないジーンズだった。東京・杉並の瀟洒(しょうしゃ)な家のドアベルを鳴らすと、はーい、と元気な声がかえり、ドアがひらいた。青みがかった着物の70代女性が、ぼくの姿に、「あらあら」と口に手をあて、銀の鈴みたいに笑った。それが先生だ...
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