機転の利いた話で笑わされたときに「座布団1枚」などと言う。ご存じ日曜日夕方のテレビ番組「笑点」が発祥の言い回しだ。放送開始60年を迎えた番組は先週末、最も長く続く週間コメディー番組として、ギネス世界記録に認定された

▼「歌丸VS小円遊」の毒舌バトルは、大人げなくて笑えた。木久扇さんの愛すべき与太郎キャラも、新潟が誇るこん平さんのやかましい田舎者キャラも、いつの間にか記憶に刷り込まれた

▼世代を問わぬ国民的番組は、日曜日が終わりゆく憂うつをばかばかしさで和らげてくれた。大喜利は出演者を入れ替えつつも、基本スタイルがほぼ変わらない。様式美とも、大いなるマンネリともいわれる

▼それでも人気を保つ理由を、あるプロデューサーは「流行に乗らなかったからかも」と分析していた。過去には人気お笑い芸人を出すよう圧力もかかったそうだが、バラエティー番組とは一線を画す伝統的な笑いを大切にした。制作側は長寿番組を「一時的に預かっている」意識なのだという

▼一方で、大喜利のお題は毎回100問余りの候補から時流を踏まえて選ぶ。スタッフはベテラン出演者に視野を広げてもらおうとSNSをやらせるなど、「楽をさせない」働きかけもした(「笑点五〇年史」)

▼努力をしながら番組の形を守り、変わらぬ固有の価値を磨いてきた。同じように過去から未来への預かり物として扱うべきものが、きっと私たちにもある。「時は来た」などと力んで変えなくてもいいものが。