都内のJR新宿駅の東南口広場に、ほぼ毎日現れる32歳の男性がいるという。「いつもいる」と話題になり、道行く人が写真を撮ったり、話しかけたりする。彼は差別や戦争に反対を訴えたくて、路上での対話を試みる
▼主張が異なる人たちに絡まれることがある。ネットで炎上するほど嫌がらせも受ける。そんな自分がひるまず、あえて公共の場に居続けることに意味があると配信動画で語っていた
▼在日外国人への差別行為にあらがおうと、昨秋から街頭に出ているという。ヘイトスピーチ解消法が施行され今月で10年を迎えたが、外国人への差別的な発信はなくならない。男性は高市政権が進める外国人政策の強化を「官製ヘイト」と表現する
▼解消法は不当な差別は許されないとうたう理念法であり、禁止規定はない。おのずと限界がある。国や地方自治体に差別解消に向けた施策を求めるが、聞くに堪えない罵詈(ばり)雑言を発し、人間としての尊厳を傷つける言動に対しても、罰則はない
▼片や、深刻で緊急性のある被害はほぼないにもかかわらず拘禁刑などの罰則を定めるべきだと、今国会で審議されようとしている法案がある。自民党がその骨子案をまとめた日本国旗損壊罪である。「国旗を大切に思う国民感情を保護するため」だという
▼国を象徴する国旗を大切にしたい心性は尊重されてよいが、差別を疎み、非人道的で狭量な言動は決して許さぬ国を目指すと掲げる方が、よっぽど自国への誇りや愛着を高めると思えるのだが。
