御年101歳の村本義雄さんは、能登でのトキ研究と保護活動の第一人者だ。この道では、佐渡で長年活動を続け、2014年に他界した佐藤春雄さんと双璧をなす
▼本州で初めてトキが放鳥された先月末、石川県羽咋市の式典会場に、村本さんの姿があった。式典でトキが入った木箱のテープを切り、1羽を空へと解き放った
▼「能登の空にもう一度羽ばたくその日まで、私は生きておりたいなという気持ちです」。佐渡で初放鳥した翌年の09年、当時84歳の村本さんは佐藤さんに会い、そう話していた。どれほどの喜びでこの日を迎えたか。大願成就という言葉がしっくりとくる
▼かつて能登に残った本州最後の野生のトキは、名前を能登の「能」に「里」と書いて「のり」といった。56年前、惜しまれながら地元を離れ、保護のため佐渡へ送られたものの、翌年にこの世を去った。今回その佐渡から能登へトキが帰ったことも感慨深い
▼死後、能里(のり)の腎臓からは有機塩素系農薬や水銀類が大量に検出され、水銀は人体に換算した場合、通常人が体内に持つ量の50倍に当たると、当時の本紙は伝えた。農薬に汚染されたドジョウやサワガニなどの餌が原因とみられ、農薬の影響があらわになった
▼放鳥後、村本さんは「この能登にすみついてくれればいい」と語った。野生に500羽前後いる佐渡は今年で放鳥から18年になる。本州定着を確認するまでに、あと何年かかるだろう。トキと共生できる環境づくりを、全国で急がねばならない。
