まんが日本昔ばなしで紹介される「キジも鳴かずば撃たれまい」は、信濃川上流・犀川(さいがわ)にあった信州の山村が舞台だ。現在は長野市にある久米路(くめじ)橋のほとりとされ、口は災いの元という戒めを伝える
▼暴れ川を鎮めるため、罪人を人柱として埋める習わしがある村の物語である。病の娘を救おうと米と小豆を盗んだ父親が、小豆まんまを食べたと口ずさんだ娘の手まり歌を端緒に捕らえられ人柱となる。娘はその後、一言も口をきかなくなるが、鉄砲で撃たれたキジを見て、鳴かなければ猟師に気付かれなかったのにとつぶやいたという
▼地元では、人柱という痛ましい習わしとともに、水害が頻発した苦難の歴史を伝える悲話としても語り継がれている。自然の力に対して、人々はなすすべもなかった時代があった
▼県内は出水期を迎えた。大雨に対する万全の備えが不可欠になる時季を前に、気象庁が5月、自然災害の危険度を周知する新しい防災気象情報の提供を始めた。台風6号が上陸した和歌山では早くも、命の危険を知らせるレベル5の特別警報が発表された
▼防災情報が新しくなったとはいえ、避難行動に結びつかなくては、その意義が薄れてしまう。まずは家族や職場、地域で、いざという時の避難経路や情報収集の手段を確認し合っておくことが大切だ
▼ラジオやテレビのニュースに加え、インターネットで身近な河川の水位情報などが入手できる。「知水」の取り組みを進めて、大切な人たちの命と暮らしを守り抜きたい。
