高校生の頃、母が持たせてくれる弁当は、茶色かった。肉とタマネギを炒めたものやレンコンの油炒め、前夜に残ったアジフライ…。どれも大好物で、食べればおいしい。ただ、見た目は地味だった
▼苦労が分かったのは、子どものために自分でつくるようになってからだ。はやりのキャラ弁をつくる技術もなければ、費やす時間もない。救ってくれたのは、ミニトマトと卵焼きとブロッコリー。赤、黄、緑の3色が入ると、少しはおいしそうに見えた
▼色が食欲に関係していることはよく知られている。赤やオレンジ、黄色といった暖色系は食欲を増進させる一方で、青や紫などの寒色系、黒やグレーなど無彩色は食欲を減退させるという。スーパーの総菜は食品トレーの色が違うと、同じ中身でも違って見えてくる
▼食と色が切り離せない関係であることを百も承知の食品業界で異変が起きている。カルビーが主力スナック菓子の「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」の包装を白黒仕様に切り替え、スーパーでは食品トレーを無地のものに変える動きもある
▼石油由来のナフサの供給不安で、印刷インキの調達が不安定になるなどした影響だ。遠い中東での戦争が影を落とし、私たちの暮らしからも彩りが少しずつ失われている
▼イランやウクライナの戦争は終わらず、砲弾が街の景色を灰色に染める。大切な人を奪われ、傷ついた人々の目に映るのはモノクロームの世界だろう。いつになったら、世界は豊かな色彩を取り戻せるのか。
