離れた土地と土地を結び、人や商品、時には文化も運ぶ。船はさまざまなものをつなぐ存在だ。航海経験がないこの船だが、つなぐ力では他の船に劣るまい。佐渡市宿根木の小木民俗博物館に鎮座する「白山丸」だ
▼北前船の寄港地・小木港に近い宿根木は、船主や船大工が多く暮らし、栄えた。北前船は明治期に姿を消したが、集落は往事の面影を残す町並みを「千石船の里」として守ってきた
▼「千石船の里というなら船が欲しい」。1990年代初めに集落の若者が声を上げた。地元の民家から幕末の千石船の設計図も見つかった。旧小木町が事業化し復元が始まった
▼住民も総力を挙げた。島外から招いた船大工に食事を振る舞い、船具は夜なべして作った。98年、地元の神社から名を取った白山丸が完成した。長さ24メートルの船体は以来、住民の誇りとなった
▼来月19日の白山丸まつりは、船の晴れ舞台といえるだろう。船を屋外に出し、160畳大の帆を上げる。今年は22メートルの帆柱を立てるクレーンの賃料が高騰する一方で市の補助金が減った。一時開催が危ぶまれたがクラウドファンディングで切り抜ける
▼観光で白山丸に触れた人や北前船ゆかりの地などから届いた寄付は、目標の50万円を超えた。「宿根木を応援します」「北前船の精神を広げて」との言葉も寄せられた。つくづく人をつなぐ船である。感謝しきりの主催者によると、夏空に白い帆が上がる光景は「最高」なのだとか。白山丸を慈しむ輪が、さらに広がりそうだ。
