またも中国で日本人が拘束された。外交での緊張が続いている中、日中両国の関係がさらに悪化しかねず、懸念する。
現地邦人の不安は増すばかりだ。中国当局は拘束した理由を明らかにせねばならない。
中国遼寧省大連で5月、地元税関当局が日本人2人を拘束したと、木原稔官房長官が明らかにした。2人は電機大手、富士電機グループの現地法人の幹部と、大連への出張者とみられる。
2人とも「国家輸出入禁止貨物密輸罪」に抵触した疑いが持たれている。レアアース(希土類)磁石を加工して、輸出を試みたことが法令違反と見なされた恐れがあるという。
中国外務省は記者会見で「中国の法律に違反したため法に基づき拘留した」と拘束を認め、「日本側は中国にいる国民や企業に中国の法律を守るよう教育すべきだ」と主張した。
これでは、2人がどのような行為をして法に触れたのか、具体的には見えてこない。詳細な説明が必要なことは言うまでもない。
中国では2014年の反スパイ法施行以降、スパイ行為をしたなどとして17人の邦人が拘束され、実刑判決を受けたケースもある。
しかし、不透明な司法手続きから、日本をはじめ国際社会から非難を受けていた。
理由が分からないままの拘束が相次ぐことに、現地の邦人社会では動揺が広がっている。
日本企業の中には、社員駐在や家族の同行を見合わせたり、中国出張の停止を検討したりする社があるのもやむを得ないだろう。中国で仕事をすることに不安を持つ駐在員も増えているという。
両国間のビジネスが停滞する恐れもあり、心配だ。
問題は、中国が経済的威圧を強めていることである。
習近平指導部は今年1月、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁への事実上の対抗措置として、レアアースなど軍民両用品目の輸出規制を強化した。
さらに今月24日には、中国商務省がレアアースなど重要鉱物の輸出規制に違反する行為に関し、通報を呼び掛ける公告を出した。通報者には、内容が事実なら報奨を与えることも規定された。
今回の拘束との関連は不明とはいえ、日本を意識した措置の可能性がある。
このため、当局による日本企業への対応は厳しさを増すとの指摘もある。資源を取り扱う企業には、特に警戒が求められる。
重要資源を「武器化」して、強圧姿勢を緩めない中国の手法は許容できるものではない。
大事なのは安心して経済活動ができる環境づくりである。そのため高市政権は、冷え込んだ中国との関係を修復できるよう、汗をかかねばならない。
