運航管理者の安全意識が著しく欠如していたことが、断罪された。多くの尊い命が失われた事実を踏まえれば、妥当な判決だ。
乗客の命を預かる交通事業者は、北の海で起きた悲惨な事故の教訓を胸に刻み、安全管理を徹底しなければならない。
北海道・知床半島沖で2022年、観光船「KAZU
Ⅰ(カズワン)」が沈没し、乗客乗員計26人全員が死亡、行方不明となった事故で、釧路地裁は業務上過失致死罪に問われた運航会社社長に、禁錮5年の実刑判決を下した。
裁判は、事故時に乗船していなかった運航管理者である被告が事故を予見できたかが主な争点だったが、判決は、悪天候の予報が出ており乗客が死亡する恐れがあったことを、被告は「容易に予見できた」とした。
被告は出航を中止せず漫然と航行させた過失で船を沈没させたと指摘、経験の浅い船長に判断を任せ、事務所を離れることが常態化していたことも認定した。
乗船していない運航管理者の刑事責任を認めたのは異例だ。
運航会社の安全管理のずさんさを厳しく指弾し、航海の安全確保を事業者全体で負うよう警鐘を鳴らしたといえるだろう。
事故には人災だとする見方もあった。きちんと安全対策を講じていたなら、事故は起こらなかったはずだ。大切な人を失った遺族の悔しさは、計り知れない。
判決を受け被告は、「これからも謝罪と償いを続けていく」とのコメントを発表した一方で、即日控訴した。
運輸安全委員会の調査報告書は、観光船は、船首付近の甲板にあるハッチのふたが密閉されず、そこから海水が入り沈没したことを事故原因とした。
事故の3日前には、国土交通省所管の日本小型船舶検査機構が目視だけでハッチは良好と判断するなど、国のずさんな検査も明らかになった。
国も判決を重く受け止めるべきだ。実務経験がほとんどなく、資格要件を満たしていない被告が運航管理者を務めていたにもかかわらず、そうした不備を見落としてきた事実も重い。
安全対策が確実に講じられているか、目を光らせねばならない。
気になるのは、知床で悲惨な事故が起きた後も教訓が生かされず、安全管理をおろそかにした船舶事業者が後を絶たないことだ。
JR九州の子会社が運航する高速船は24年に、浸水を隠したまま3カ月以上運航を続けていた。
沖縄県・辺野古沖で高校生ら2人が亡くなった今年3月の事故では、船が無登録だったとして、海上運送法違反容疑で死亡した船長が刑事告発された。
事業者は、乗客の命を預かっていることを忘れてはならず、安全軽視の経営は決して許されない。
