多様な生き方が尊重される共生社会の実現に向けた取り組みが求められる。政府は当事者の苦しみを受け止めるべきであり、消極的な姿勢は改めねばならない。

 政府は性的少数者への理解を促す「LGBT理解増進法」に基づく基本計画を閣議決定した。2023年に法が施行されてから23日で3年になる中、ようやく基本計画が策定された。

 増進法は罰則のない理念法で、具体的な施策の指針となる基本計画に基づき、実効性を確保できるかどうかが問われる。

 計画では「生きづらさや戸惑い、不安を抱えている人もいる」とした上で「重層的な普及啓発が望ましい」とした。学校や地域、職場などでの啓発推進や、相談体制の充実が計画の柱だ。

 国がリーフレットや研修動画を作成して自治体に提供するほか、行政職員や教職員へ研修を実施する。スクールカウンセラーも活用する。孤独や孤立に関する悩み相談に応じ、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷にも対応する。

 だが、内容は既存の制度を寄せ集めたにすぎない。学校教育の実施についても、具体的な記述はほとんどない。

 民間団体が行った25年の調査では、性的少数者の中高生約9割が過去1年間に学校でLGBTQを笑いの対象にされるなどの経験があった。差別や偏見は今も根強く、孤立する人も少なくない。

 子どもをはじめ、困難を抱える人の助けになるよう、実態に即した政策が求められる。

 法制定段階から保守系議員の反発が根強く、計画策定でも「国民の理解が十分に進んでいない」との現状認識を自民党内の議論で「認識は広がりつつある」と修正した。保守派への配慮がにじむ。

 基本計画の策定まで3年近くがかかった異例の事態となった上、内容にも当事者から「理解増進を大きく進めようという姿勢は感じられない」と批判が出ている。

 基本計画で「マジョリティーの安心」に言及したことも気がかりだ。性的少数者らマイノリティーが多数者に不安を与えていると捉えられ、差別を助長することにつながりかねない。

 多数者が認める範囲でしか、少数者の人権が認められないとの懸念もある。当事者の思いに向き合った施策を実行すべきだ。

 世界各国で実現している同性婚についても政府は後ろ向きだ。

 自治体が先行し、各地で同性パートナーシップ制度の導入が広がる。介護休業など福利厚生面で同性カップルを法律婚と同様に扱う企業もある。

 同性婚を認めない民法の規定を違憲とする判決が高裁で相次ぐ。権利保護に向け、国会での議論も求められる。

 差別をなくすため、国民の間でも理解を広げていきたい。