各地で戦火が上がり、国際秩序が揺らぐ中での平和の祈りだ。歴史を語り継ぐとともに、不戦の誓いを胸に刻みたい。沖縄の抱える現実にも向き合わねばならない。

 太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍の組織的戦闘が終わったとされる日から81年の「慰霊の日」となった23日、沖縄県糸満市で沖縄全戦没者追悼式が営まれた。

 住民を巻き込む苛烈な地上戦となった沖縄戦では、日米で20万人超が犠牲となり、県民の4人に1人が命を落とした。沖縄は戦後、米軍により占領され、現在まで続く基地問題の原点となった。

 式で中学生が「平和の詩」を朗読した。曽祖母が戦火から逃げ惑った壮絶な体験を基に、「もう二度と沖縄の空を戦争で染めてはいけないから」として、曽祖母の体験や平和への思いを未来に伝えていくと決意を語った。

 体験者の生の声を聞く機会は減っている。2025年に沖縄歴史教育研究会が公表した高校生調査によると、約6割が沖縄戦について語る家族らがいないと答えた。この割合は増加傾向にある。

 体験を語れる人が少なくなる中、デジタル技術の活用など継承のための模索が続く。どう語り継いでいくのか知恵を絞りたい。

 気がかりなのは、平和教育に萎縮の兆しがあることだ。

 生徒1人が亡くなった今年3月の名護市辺野古沖の船転覆事故を受け、文部科学省は京都府の同志社国際高の学習内容が多様な意見を扱っていなかったとして、政治的中立に反すると認定した。

 その後、沖縄県立学校で米軍基地の見学を中止する事例があったほか、出前授業を行う企業に対し、複数の学校が米軍基地をテーマに扱わないよう要望していた。

 基地問題は沖縄戦の延長線上にあり、切り離して考えるべきではない。子どもたちが歴史を学び、平和について考える機会を奪われないようにしたい。

 高市早苗首相は式で「在日米軍施設・区域の整理・縮小に取り組む」と述べた。沖縄には在日米軍専用施設の7割が集中し、米兵による事件事故も後を絶たない現状から目をそらしてはならない。

 加えて、政府は中国の海洋進出を背景に南西諸島の防衛力を強化している。

 ロシアによるウクライナ侵攻など、国際規範を無視する動きがある中、米軍や自衛隊の施設を多く抱えることで再び戦争に巻き込まれないか不安を抱く県民もいる。

 政府は防衛力の増強だけではなく、紛争を未然に防ぐための外交力の強化に努めるべきだ。

 秋には知事選を控える。宜野湾市の米軍普天間飛行場の辺野古移設が大きな争点になる。県民の判断が注目されるが、沖縄に重い負担を押しつけている現状について、本土に住む私たちが自分のこととして考える必要がある。