混迷の中からたどり着いた合意である。認識の違いを埋めるよう協議を進め、世界経済の混乱に終止符を打たねばならない。
米国・イスラエルとイランの戦闘を巡り、トランプ米大統領は14日、戦闘終結に向けた覚書が「成立した」と発表した。
イラン側も覚書を最終決定したと表明した。19日にスイスで署名式を開く。
覚書の内容は公開されていないが、仲介したパキスタンのシャリフ首相は、米イラン双方が全ての戦闘の即時終結を宣言したと発表した。中東情勢の緊張を緩和させる前進と言えよう。
2月の米イスラエルによるイランへの先制攻撃以降、イランやレバノンでは多くの市民が犠牲になった。エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡はイランによる事実上の封鎖が続き、石油などの流通に大きな影響を及ぼした。
経済に深刻な打撃を受けていた世界が望んだ合意だ。歩み寄った背景には、11月に中間選挙を控えるトランプ氏がガソリン価格の高騰に焦り、イランも国内経済が極度に悪化していたという両国の事情がある。
だが、今回の合意が着実に履行され、最終合意につながるまでは油断できない。
焦点の一つであるホルムズ海峡の通航に関しては、両国とも全ての商船に即時開放するとした。
ただ、イラン側は海峡を通航する船舶に「サービス料」を課すと主張したが、トランプ氏は米紙に「恒久的に通航料無料となる」と反論した。思惑の違いを埋め、「航行の自由」の原則を守る協議を急がねばならない。
隔たりの大きいイラン核問題も、本格的な協議はこれからだ。19日の署名後、核問題などを巡る60日間の協議を開き、最終解決を目指すことになる。
2015年のイラン核合意では、交渉に約2年を要した。今回は交渉期間が限られる上、原子力の平和利用の権利を主張するイランは、ウラン濃縮活動の継続を譲らないとみられる。核施設解体などを求める米国との溝は大きい。
核問題を協議するさなかに攻撃を受けたイランには、米国への不信感が根強い。トランプ氏は核協議で合意できなければ攻撃を再開する可能性に言及するが、不信を乗り越える粘り強い協議にこそ注力すべきである。
イスラエルのネタニヤフ首相の強硬姿勢も懸念される。覚書決定の発表直前にも、親イラン民兵組織ヒズボラ司令部を標的に、レバノンを空爆した。トランプ氏は不快感を示したとされ、共闘してきた両国の足並みが乱れている。
ネタニヤフ氏は総選挙に向け、戦闘継続を望む国内の声を重視しているとされる。過度な自国優先は許されない。和平を求める国際世論を直視せねばならない。
