破壊された人工衛星の破片が猛スピードで宇宙空間を飛行しスペースシャトルに衝突する-。2013年の映画「ゼロ・グラビティ」の一場面である。「宇宙ごみ」の脅威を臨場感たっぷりに描いた
▼映画の中の話とは限らないというから背筋が寒くなる。今後10年間でロケットの残骸などが地上に落下して死傷者を出す確率が、少なくとも10%に上るという。カナダの大学の研究チームが分析したとの記事が、先日の本紙「おとなプラス」に載っていた
▼これまでは落下のリスクは無視できるレベルとされてきた。ところが宇宙開発の進展でロケットの打ち上げが増えた結果、リスクが累積し、従来考えられていた以上の危険があることが分かった
▼実際に近年は、米国や中国のロケットの燃料タンクなどが落下する事態が起きている。研究チームによると、1992年からの30年間で1500以上のロケットの残骸が軌道から外れ、このうち7割ほどが制御不能になっているとみられる
▼宇宙ごみの中にはバスぐらいの大きさのものがあるらしい。天が崩れ落ちてきたら逃げ場がないと心配して、夜も眠れなくなったのは古代中国の杞(き)の国の人だという。杞憂の由来となった故事が、あながち笑い話では済まなくなる
▼宇宙ごみを人口密集地から離れた海に落とす技術はあるが、コストの問題から採用しないケースが多いそうだ。だが今回の分析結果が確かなら、コストの問題とは言っていられない。自分たちが出したごみは片付けないと。