インベーダーゲームが家にあったなら-。そんな昭和の子どもの夢をかなえてくれたのがファミコンだ。任天堂が1983年に発売した家庭用テレビゲーム機。一世を風靡(ふうび)したスペースインベーダーはゲームセンターやゲームコーナー、喫茶店でしか遊べなかった

▼カセットを入れ替えるシステムも画期的で、スーパーマリオブラザーズやドラゴンクエスト、桃太郎電鉄などの名作ソフトが生まれた。ゲーム機本体も進化を続け、ゲーム産業が発展した

▼任天堂も成長し、今や日本を代表するグローバル企業の一つだ。最近はスイッチ2の販売が世界的に好調で、2026年3月期の売上高は2兆円を超える見通しだという

▼任天堂が元々、花札を作っていたというのは有名だ。花札からトランプ、電子玩具へと事業を変え、1970年代に業務用テレビゲーム機の分野に進出。ファミコンの開発に至った

▼任天堂と同じように、創業時と現在の事業が違う企業は多い。ブリヂストンは足袋の製造、サンリオは絹製品販売、マツダはコルク製造から始まっている。県内企業も亀田製菓は水あめ製造、コメリは米穀商、ハードオフコーポレーションはオーディオ専門店だ

▼強い者ではなく、変化に対応できる者が生き残る-。よく知られた格言を体現してきたからこその現在の隆盛だ。物価高や人口減少、デジタル化など取り巻く環境は厳しく、目まぐるしい。しかしピンチはチャンス。変化を恐れてはならない時代である。会社も、そして人も。

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