中学校に登校しなくなった「君」に寄せて、小欄を書いたのは5年前だった。当時、回り道をしても中身のかっこいい大人になればいいなんて書いたけど、君はその後、高校を経て専門学校に入り、将来像を温めていると人づてに聞いた

▼長らく学校に通えない時期があっても、時が来れば進むべき道を見つけ、そのために必要なことに取り組める、それを実証した。あの頃の君のように、未来に不安を抱えている子どもたちやその家族を「きっと大丈夫だよ」と励ます存在になった

▼少子化が進む一方、小中学生の不登校は増え続けている。この5年でほぼ倍増した。昨年度県内は5829人に上った。不登校を選択肢の一つとして、その後につながるステップを整えることが大切なのだと思える

▼そのためのエッセンスが、9月に発刊されたジャーナリストの島沢優子さん著「不登校から人生を拓(ひら)く」には詰まっている。困りごとを抱える4千組の親子と向き合った相談員池添素(いけぞえ・もと)さんの考え方と、不登校当事者らの歩みが記される

▼不登校は充電期間だという。エネルギーが満ちれば動き始める。だからそれまで親は「うん、分かった」とその子を認め、信じて待てばいいと説く。不登校になっても可能性は閉ざされないというメッセージが心強い

▼池添さんの言葉を引用する。〈不登校を経験した子どもはすごくたくましくなるよね。みんなどこかで自分を作り直し、新しい自分で歩み出しているように見える〉。君もその一人なのかな。