タレントで歌手の嶋大輔さんが歌った「男の勲章」は、昭和57年のヒット曲だ。リーゼントヘアに極端な丈の学生服で、〈つっぱることが男のたった一つの勲章〉だと、強がってみせた
▼社会や学校のルールにあらがい、「男は男らしく」といった価値観を体現していた。肩で風を切ってはいたけれど、ツッパリだって楽だったわけではないのだろう。泣きたくなるようなときも「俺たち」は頑張って、歯を食いしばって耐えてきた、と続く歌詞には哀愁が漂う
▼昭和の頃は、ツッパリではなくとも弱みを見せまいとする男性が多かった。令和の今は変わったと思いたいけれど、果たしてどうか。ツッパリの服装はもう見ないが、男性の生き方はそれほど変わっていないのかもしれない
▼長時間働く日本の男性は今も多い。「男だから我慢するべきだ、頑張るべきだ」「男はバリバリ働いてなんぼ」といった昔ながらの物差しが社会に残っていはしないか。一日の大半を仕事に拘束され、緊張も解けない、家族との時間も持てないのでは、いつまでも「男はつらいよ」
▼男性の生き方、働き方、男性が心身に抱える問題に関心を持ちたい。きょう19日は「国際男性デー」である。カリブ海の島国トリニダード・トバゴで提唱されて始まり、今年で26年になる
▼きょうくらいは男性も大いに弱音を吐き、自らの「生きづらさ」と向き合ってはどうだろう。本当に大切なことは何かに気づくかも。多様な生き方が尊重されるべきなのは、男女共通だ。
