ずっとMだと思っていたら、いつの間にかLに変わっていた。洋服のサイズのようだがそうではない。女性の働き方を巡る問題のことだ
▼よく知られた言葉に「M字カーブ」がある。女性の労働力率を年齢別に示したグラフのことで、20代で上がった後、30代になると出産や子育てのため下がり、40代以降にまた上がる。グラフにすると「M」に似た線になる
▼男女雇用機会均等法が施行される前の1985年はM字の底は30代前半で、労働力率は5割未満に落ち込んだ。現在の底は30代後半で8割弱を保つ。グラフはMから台形に近くなった。仕事と家庭の両立がしやすくなったことが大きい
▼新たに登場したのが「L字カーブ」である。こちらは正規雇用で働く女性の比率を年齢別に表していて、20代でピークに達した後はずっと下がり続ける。グラフにすると「L」を時計回りに90度回転させた形になることが由来だが、ひらがなの「へ」と言った方が伝わるか
▼二つの曲線からは、働く女性は増えたけれど、正規雇用は難しいという現実が見える。銃撃された安倍晋三元首相は第2次政権で400万人を超える雇用を生み出したと誇ったが、増えたうちの3分の2はパートやアルバイトなどの非正規。そこでは多くの女性が、不安定な条件下で働いている
▼本県の最低賃金は過去最大となる31円の引き上げが答申された。非正規を含む全ての雇用者が対象だ。物価も高騰が続く。賃上げをしっかり実現し働く人の暮らしを支えなくては。