原発の新増設や建て替えを否定していた政府の方針を首相が転換した。柏崎刈羽原発は来年夏以降の再稼働を目指し「国が前面に立つ」と明言した。以下、しばし架空の話をお読みいただく
▼本県で原発を争点にした知事選と衆院選が立て続けに行われ、再稼働反対派の候補が軒並み勝利した。賛否を問う住民投票でも反対が7割を占めた。しかし、国策が優先されるとして民意は無視され、国は再稼働への圧力を強める
▼立地県の懸念を知ってほしいと、県内全市町村の首長と議会議長が都内で国の方針撤回を訴えるデモ行進をしたところ、沿道から「売国奴」「国益の足を引っ張る反日死ね」と罵声を浴びる
▼原発周辺で抗議の座り込みを続ける一部住民が機動隊に強制排除される。「警察官の拡声器のひもを引っ張った」などの微罪で逮捕される事例も相次ぐ
▼地元紙は民主的手続きと新潟の主権を尊重するよう論陣を張るが、国益に反する報道だとして、名の知れた作家が与党の勉強会で「新潟の新聞はつぶさなあかん」と言い放つ。抗議行動を取材中の記者が現場から排除され、警察官に拘束される事態も起こる
▼これらはフィクションだが、原発再稼働を沖縄における米軍飛行場の辺野古移設やオスプレイ配備、ヘリパッド建設に置き換えれば、すべてが現実に起きたことである。沖縄の地元紙記者が著書で訴える。「きょうの沖縄は、あすの本土である」と。辺野古移設を重要な争点とする沖縄県知事選は11日、投開票を迎える。