太平洋戦争末期に新潟県加茂市で製造したとみられる軍事飛行機用の木製プロペラ2本が、27年ぶりに市民俗資料館に展示された。「木工のまち」が戦渦に巻き込まれていった歴史を静かに語っている。
プロペラの長さは、茶色が2・75メートル、灰色が2・66メートル。市内の木工業者が軍需産業に転換し、パイロットを養成する練習機用に作られたとみられる。
同館が現在地に移転した1994年以降は倉庫に眠っていたが、昨夏に新潟日報が紹介したのを機に、「実物を見たい」と複数の問い合わせがあったという。8月上旬、「加茂・九条の会」の企画展に1本を貸し出して公開。多くの人に見てもらおうと、同中旬から常設展示することにした。来館者からは「通っていた小学校にあった」などと戦後の証言が寄せられている。
今後、収蔵庫に保管されている軍需工場の看板や防毒マスク、千人針なども並べ、戦争関連の展示を充実させる予定だ。
同館の伊藤秀和さん(53)は「お国のためなのか、生活のために仕方なく作っていたのか。負の歴史に目を背けず、戦時中の人々の思いを想像してほしい」と話した。
無料。月曜、祝日、第1・3・5土日曜休館。問い合わせは同館、0256(52)0089。