障子を破り穴を空けてしまった。ふさがねば。破れた区画の紙を取り除き、周囲の枠に糊(のり)を塗って新たな紙を貼る。一時しのぎに、うわべを取り繕うことを意味する「糊塗(こと)」は、こんな行状が由来なのか
▼とりあえずは証拠隠滅に成功した…と思ったら、新しい部分と周囲の紙の色がまるで違う。ごまかしたのが一目瞭然である。破れ障子に限らず、ごまかしたり、うそをついたりすると取り繕うために別のうそをつかざるを得なくなる
▼北朝鮮もそんな事態に陥ったようだ。拉致した横田めぐみさんは病院で死亡したと言い、当初はその時期を「1993年3月」と説明した。ところが同じ拉致被害者の蓮池薫さんが「94年に見た」と証言すると入院期間の説明を訂正。さらには死亡時期を「94年4月」に再訂正した
▼北朝鮮が提供しためぐみさんの「遺骨」も鑑定で別人のものであることが判明した。かの国の説明には虚偽や、あまりに不自然なものが目立つ。多くの疑問が解消されないまま、拉致を認めた日朝首脳会談から20年が過ぎてしまった
▼北朝鮮がいくら拉致問題は解決済みだと主張しようとも、こんなずさんな説明を信用できるわけがない。それなのに実質的な交渉は止まったまま、時間だけが過ぎているのが実情だ。どうにもやりきれない
▼拉致問題に関する北朝鮮の説明は、破れや継ぎはぎだらけの障子戸である。きちんと張り替える姿勢を見せることこそが日朝関係の正常化や自国の将来につながることを理解すべきだ。