全国で初めて男女同権を訴える演説をした女性は、本県人という話がある。1881(明治14)年の9月18日、自由民権運動が熱気を帯びる中、柏崎市で2千人が集まった演説会後の懇親の席だ
▼弁士は教員の西巻開耶(さくや)、地元出身で15歳だったという。「西巻さくや女は男女同権論を演し女子教育の必用を痛論せられた」。1週間後、新潟新聞が記事にした。演説は19日との説もある
▼若い民権活動家は82年11月3日、政談演説会で祝辞を朗読し警察に勾引される。当時教員が演説会に参加することは禁じられており、集会条例違反などで罰金を科せられた。この光景は東京の新聞も絵入りで紹介した。女性政治犯第1号とも評される
▼最初の男女同権演説から140年以上もたった。憲法14条が保障する平等の状況は、どれほど進んだだろう。世界経済フォーラムによる今年の「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で、日本は146カ国中116位。中国や韓国より下位だ。とりわけ政治分野は139位と女性の地位が極端に低い
▼その希少な女性議員である杉田水脈(みお)衆院議員が先の内閣改造で総務政務官に起用された。「女性はいくらでもうそをつける」「(性的少数者は)生産性がない」などと言い放った人物だ。任命した首相の見識が問われる
▼医学部入試で女性を理由に減点したとして裁判所に賠償を命じられた大学もあった。この国の性差別はどれほど根深いのか。西巻が訴えた男女同権は、まだ道半ばと言わざるを得ない。