あれこれ思いをめぐらす思索の季節になった。太陽がぎらつく夏は頭がゆだって、そうもいかない。思索にふけるなら、野の花をめでながらもいいし、静かな図書館もいい

▼旅先の石川県で県立図書館を案内してもらった。移転して7月に開館したばかり。入ってみるとユニークな風景だった。来館者を囲むように書架がぐるりと配置され、書架はさらに2階へ3階へ渦を巻くように延びてゆく

▼所々で本にスポットライトを当てる演出もある。市民が「円形劇場」と称するのも分かる。夏休みには1日5千人が訪れたという。見渡すと若い人が多い。カップルも多い。小さい子がドタドタ駆ける姿もある

▼椅子が至る所にあるのはなぜだろう。木製ありソファ状のものもあり、大きさも大小ある。聞くと100種類以上の椅子を置いたらしい。あらゆる人の居場所でありたいから、そうなった。この空間で2時間、3時間とくつろぐ姿があるのだという

▼「思いもよらない出合いによって人生のページをめくることができる場所」。それが目指した図書館像だ。書架の間を散歩のようにぶらりと歩き、気になった本を開く。そこに新しい道を見つけることができるのかもしれない

▼冒頭に書いた思索の「索」の字は探索や検索の索であり「探し求める」との意味がある。人生の次ページを探すなら、ふだんは読まない分野の本を手に取った方が面白そうだ。本県にも十日町情報館など居心地のいい施設がある。地元の図書館を訪ねてみようか。

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