地球温暖化を引き起こす温室効果ガスを、最も排出している生物は人間だ。ならば、その次にたくさん出している生き物は? どうやら牛のようだ。その中心は牛のげっぷである

▼世界には15億頭の牛が飼育されている。牛は毎分げっぷをして、毎日500リットル前後のメタンガスを胃から外に出している。二酸化炭素に換算すると、世界全体の温室効果ガスの4%を占めるとされる

▼でも肉牛も乳牛も結局は人間の生活のために飼われている。だから牛たちにとって、温暖化の責任転嫁は納得できまい。人間の側でも排出を減らすべく肉食を控え、米粉などで代替チーズを作ろうという動きが起きている

▼牛のげっぷに含まれるメタンを抑える飼料の研究も進む。例えばカシューナッツの殻の油などには、メタン抑制の効果があるという。農水省は9月、飼料添加物の評価基準を策定した。少しでも“上質な”げっぷをする牛を増やそうという取り組みだ

▼そんな中、残念なニュースが届いた。ロシアとドイツなど欧州を結ぶ、天然ガスの海底パイプラインで複数のガス漏れが起きたという。メタンガスが激しく海面から吹き出した

▼ロシアのウクライナ侵攻が泥沼化している。ガス漏れは、これに関わる破壊工作という指摘もある。欧米メディアによると、国連は過去最大規模のメタン噴出になりそうだとして温暖化の加速を懸念する。侵攻はすでに多くの犠牲者を出している。さらに地球の環境をも汚す愚行だとしたら、言葉を失ってしまう。

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