先日紙面に載った民間調査による全国魅力度ランキングを見て驚いた。北海道1位、本県25位の見出しの横に「最下位は佐賀」とある。9月に旅した佐賀では多くのものに心引かれたのだが
▼呼子(よぶこ)町(ちょう)の名物「イカの活きづくり」は甘口しょうゆで食べると絶品だった。焼酎が人気の九州にあって、佐賀には日本酒の文化がある。甘口の地酒が舌先を心地よく刺激した。陶磁器の産地、唐津市や有田町では窯元の多さに感心した
▼魅力あふれる土地だと思っていたのに、地元の人が「佐賀にはなんもなか~」と話していたのが不思議だった。地元紙佐賀新聞の知人に聞くと、魅力度47位を「やむを得ん結果」と冷静に受け止めつつ、佐賀県人は地元の魅力を伝えるのが苦手なのだという
▼幕末に薩摩、長州などと明治維新をけん引した佐賀藩の歴史からか「中央志向が強く、佐賀県外、とりわけ都会にいいものがあると信じて疑わなかった心性が、自分たちの住む地域を『なんもなか~』と卑下する空気を生んでいるのかも」と分析してくれた
▼PR下手、中央志向は本県でも長年指摘されてきた。感染禍が落ち着いて水際対策が緩和され、国内旅行の支援も始まった。ランキングに一喜一憂せず、足元をしっかり見直したい
▼旅の魅力を高めるのは地元の人との触れ合いだろう。伊万里市の居酒屋で店主と常連客が地元ならではのお薦めをたくさん教えてくれた。同行した家族はメモを取るのに追われた。「なんもなか~」どころではなかった。