東田直樹さん(30)が著書「自閉症の僕が跳びはねる理由」を世に出して15年になる。会話が困難な自閉症の当事者が、周囲に理解されにくい行為や態度の理由を自ら文章で解説した内容は驚きだった
▼本は世界30カ国以上で出版されるベストセラーとなった。よくぞ書いてくれたと喝采した人も多かったはず。ただこの15年で、自閉症を含め、発達障害に対する社会の理解はどれほど深まっただろうか
▼英国の自閉症研究者パトリシア・ハウリンさんが、多くの当事者の孤独を代弁する。「もし自分の周囲で起きていることの意味が理解できず、周囲に伝えたいと思うことの伝え方が分からず、その困難を脱却するための想像力も失っているとしたら、あなた方は一体どのような行動を示すことになると思いますか」
▼そうした行動が著しく激しくなったケースが、自傷や他傷、破壊行為を伴う強度行動障害である。元々の障害特性ではなく、困り事が周囲に理解されない結果としての状態だとされる
▼米ノースカロライナ州では自閉症者の能力を最大限引き出す支援の研究と実践が進んでおり、現地では強度行動障害を見たことがないと指摘する研究者もいる。ツボを押さえた働きかけが、いかに大切かを物語っている
▼国は今月初め、強度行動障害の支援を考える検討会を発足させた。専門的なケアに当たる人材育成を含めた環境整備を目指し、3月に報告書をまとめるという。期待はしたい。スピードは大事。けれど思う。たった半年で?